いらない不動産の引取サービスってどうなの?詐欺やトラブルに巻き込まれない?
司法書士法人オールシップの市山です。
相続で受け継いだ山林や原野、田舎の空き家や別荘地など、売却や活用が困難な物件が増えています。
こうした不動産を持っていると、固定資産税や管理費がかかります。
また、放置しておくと近隣トラブルや犯罪のリスク、自然災害の危険も高まります。
そのままだと次の世代が困ることになるので、自分の代のうちに処分したいという方も多いと思います。
2023年に、国がいらない土地を引き取る制度(相続土地国庫帰属制度)もできました。
ただ、実際にこの制度の対象になる土地はあまり多くないと言われています。
また、自治体に寄付したいといっても、たいていは受け取ってくれせん。
不動産引取サービスの登場
こうした不動産について、最近は、不動産業者にお金を支払って引き取ってもらうサービスが増えてきました。
一般的には、不動産を処分するときは「売却してお金をもらう」のが普通ですが、引き取りサービスの場合はその逆で、「お金を支払ったうえで引き取ってもらう」というサービスです。
不動産の状況や面積等にもよりますが、引き取り料は、おおむね40万~150万円前後が一般的なようです。もちろん、建物や残置物があったり、管理に相当の手間がかかるような土地の場合は、それ以上になることもあります。
不動産は資産価値があるもの。売れるもの。というイメージがある方も多いと思います。
また、いらない不動産といっても、自分や親が結構なお金を出して買った土地かもしれません。
そうした方からすると、わざわざ自分達がお金を払ってまで土地をあげるというのは納得しづらいと思います。
ですが、不動産は持っているだけでリスクや管理費用がかかる物件もありますし、相続土地国庫帰属制度でも国に負担金を支払わないといけないことから考えると、引き取りにある程度の費用がかかることは仕方のないことかなと思います。
不動産引取サービスのメリットと注意点
不動産引取サービスのメリットは、次のような点です。
・買い手がまったくつかない土地でも処分できる可能性がある
・物件の立ち合い不要で早く手放せる
・境界があいまいでもそのままでOK
引き取り手がまったくない土地を抱えている方にとっては、素早く手放すことができて、うれしいサービスですね。
ですが、この不動産引取サービスには注意点があります。
– 引き取り業者によっては悪徳業者も存在する
最近では、引き取り業者による詐欺も目立っています。
被害件数や被害金額の増加を受けて、消費者庁や政府広報でも注意喚起されています。
引取サービスには法的な規制はありません。そのため業者はピンキリです。なかには悪徳業者も存在します。
悪徳業者は、例えば、次のような手口で騙そうとします。
事例1:不動産の引取サービスを利用したら、気づいたら他の土地を買ったことになっていた。
Aさんは、以前から使っていない山林の土地を持っていましたが、管理の手間や固定資産税がかかるので、どうにかして処分したいと思っていました。
そんなとき、インターネットで「いらない不動産の引取サービス」という広告を見つけました。
このサービスは、どんな状態の不動産でも引き取ってくれるというものでした。Aさんは早速電話してみました。
電話に出たのは、某不動産会社の営業マンと名乗る男性でした。
この営業マンは、Aさんの土地の場所や面積などを聞いてすぐに、「問題ありません。ただ、今後の管理費などを考えると、その土地だと100万円ほどお支払いをお願いしますが、いかがでしょうか。」と言いました。
Aさんは多少の費用を払ってでも手放したいと思っていたので、すぐに契約書を送ってもらうことにしました。
送られてきた契約書には、「不動産を引き取ります。」というような内容が書かれていました。Aさんは何も疑わずにサインして返送しました。
しかし、数日後、Aさんは驚くべきことを知りました。
実は、Aさんがサインした契約書には、細かく書かれた条項がありました。
その条項には、「お客様は当社から指定された不動産を100万円で購入することに同意します。」ということが書かれていました。
つまり、Aさんは別の土地を買う契約をさせられていたのです。
しかも、その土地はAさんの土地と同じように山林で使い道がない土地でした。
Aさんはすぐに電話して文句を言いましたが、営業マンは「契約書に書かれていますよ。あなた自分でサインしたんですよね。」と言って切りました。
この業者はいらない不動産を詐欺のように転売して儲けている会社でした。結局、Aさんはいらない土地を高額で買ったことになってしまいました。
事例2:不動産の引取サービスを利用したら、後から高額な請求をされた。
父親が購入した別荘地を相続したBさん。
別荘地と言っても、バブル以前に売り出された土地でまったく開発されないまま放置されたエリア。
電気・水道・ガスはもちろん通ってなく、周りには建物は1軒もない、草木が荒れ放題の状況になっています。
Bさんは処分に困り、インターネットで見つけた不動産の引取サービスに電話しました。
すると、親切な担当者が電話に出て、「お客様の土地はどこにありますか?」「どのくらいの広さですか?」「どんな状態ですか?」などいろいろ聞いてきました。
Bさんは、正直にいろいろと答えたところ、その担当者は「その土地なら大丈夫です。無料で引き取ります。」と言いました。大喜びのBさんは、早速契約書を送ってもらって、サインをして送り返しました。
しかし、その後、Bさんに対して、業者から「測量費用や処分費用がかかったので、150万円を支払ってください」という高額な請求書が送られました。
Bさんは、無料で引き取ると言われていたので納得できませんでした。しかし、業者は「契約書をよく見てください。不動産は無料で引き取りますが、測量や処分の費用がかかったら別途支払うと書いてある」と主張してきました。
契約書をよく見ると、確かに小さな文字で「費用は別途発生した場合は全額支払う」と書かれていました。
Bさんは、契約書の内容を十分に確認しなかったことを後悔しました。
事例3:不動産の引取サービスを利用したら、悪質な業者に転売されて、詐欺に利用された。
母親が持っていた山奥の土地を相続したCさん。
実際にその土地には行ったことがなく、どんな状況になっているかもわかりませんでした。
こんな土地を自分の子供に引き継がせたくないと思ったCさんは、インターネットで調べた不動産の引取サービスを利用しました。
引取サービスの担当者は、とても親切で、書類や手続きもすべて代行してくれました。Cさんは、土地を手放すことができ、すっかり安心しました。
しかし、その後、Cさんはとんでもないことに気づきました。Cさんが引き渡した土地は、引取サービスの業者によって悪質な転売業者に転売されていたのです。しかも、その転売業者は、Cさんの土地を詐欺に利用していたのです。
どういうことかというと、Cさんから引き取った土地を、「豪華な別荘地」とか「道路開通予定の値上り確実な物件」とか偽って販売していたのです。
その上、購入者には高額な手数料や管理費を請求しているようでした。
Cさんは、引取サービスを利用した際に、担当者からは「この不動産を有効利用してくれる方に使われる」という説明を受けていました。しかし、実際には詐欺に利用されていたのです。
そして、さらにショックなことに、Cさんのところには、「あなたも詐欺の一味なのか」などの連絡が入るようになってしまいました。
事例4:不動産の引取サービスを利用したら、個人情報が流出した。
Dさんは、若い頃に買った地方の山林を持っていました。でも、その土地は管理もできないような遠方で、税金もかかるし、売るにも買い手がつかないし、どうしようかと悩んでいました。
そんなときに、インターネットで見つけたのが、引取サービスでした。
申し込みの際には、名前や住所、電話番号などの個人情報を入力する必要がありました。それに加えて、土地の所在地や面積、登記簿謄本などの書類も送る必要がありました。
Dさんは何も疑わずにすべて送りました。すると、数日後に引取業者から電話がかかってきました。
業者は、「残念ながら、この土地は引き取れません。」と結局は引き取りをせず、個人情報だけを手に入れました。
数週間後、Dさんの自宅に詐欺に巻き込むような手紙や電話が頻繁にくるようになりました。そこで、Dさんは、自分の個人情報が他の業者や第三者に売られ、詐欺などの犯罪行為に利用されているのではないかと思いました。Dさんは、自分の個人情報が漏洩していることに怒りと恐怖を感じました。
地に足のついたビジネスとして引取サービスを提供している不動産会社もある一方で、詐欺などの犯罪に利用する会社があることも事実です。
また、詐欺とまではいかなくても、引き取った業者が、ゴミの不法投棄に利用したり、違法な盛土による土砂崩れが発生するなど、悪用や違法な行為に使われるおそれもあります。
元の所有者としては、手放した以上、法的には関係ないかもしれません。
ですが、「そもそも売った人は誰だ?!」とか、「この土地はもともと〇〇さんの土地」と言われ、トラブルに巻き込まれかねません。
なかには、引き取るだけ引き取って倒産してしまう(いわゆる「計画倒産」)会社もあります。
不動産引取サービスを利用するときの注意
いらない不動産の引取サービスを利用する際は、トラブルに巻き込まれないために、次のような点によく注意しましょう。
– 業者の宅建業許可の更新状況や行政指導などの履歴
– 代表者や担当者が自分の顔と名前をきちんと出して活動しているか
– 契約時に書面でしっかり説明があるか、第三者の立ち合いを認めてくれるか
– 契約書の内容によくわからない条項や不透明な条項がないか
– 引き取りの際に所有権移転登記(名義変更)がきちんとされるか など
もちろん、真面目に引取サービスを展開して、社会的問題に誠実に取り組んでいる会社もあります。
そうした会社は、引き取った不動産をどういう風に活用したり売却したりするか(いわゆる「出口戦略」)をしっかりと考えています。
そもそも、なぜいらない不動産を引き取るサービスをしているのか、その会社の理念までよく確認して、信頼できる会社に頼むようにしましょう。
いらない不動産(「負動産」)の処分サポート
当事務所では、相続登記と合わせて、「いらない不動産(「負動産」)の処分サポート」を行っています。
・相続土地国庫帰属制度の検討
・不動産仲介会社または引取会社の選定
・不動産の情報収集
・現地調査(ご希望や必要により)
・契約内容の確認
・売却手続きの立ち合い、登記手続き
◆費用
①事務所報酬:275,000円~
②国庫帰属の負担金:200,000円~
または
引取業者への支払い:要査定
相続した不動産を安全に手放したい方向けのサポートです。
対象物件は全国の物件が可能ですが、「当事務所に相続登記などのご依頼をいただいたなかで、不要な不動産がある方」を対象とさせていただいております。(現在、いらない不動産の処分だけのご相談・ご依頼は承っておりませんのでご了承ください)
詳細はお問い合わせください。(初回相談無料)
※悪質な引取業者に頼んでしまい、既にトラブルが発生している場合は、警察、消費者センター、弁護士等にご相談ください。当事務所にご連絡をいただいた場合でも、相談対応はできかねます。
※ご自身で見つけてきた引取サービス会社との売買や登記のサポートのご依頼は承っておりません。また、当事務所と面識がない・紹介でない引取業者からの提携の案内も一切受け付けておりません。ご了承ください。