遺言書にマンションの集会所の記載が漏れていた!
司法書士の髙木です。
今日は遺言のお話です。
大切に保管されていた「自筆証書遺言」
実は、財産の記載が漏れていて、危うく家族トラブルになってしまいそうになった!
そんなご相談が実際にありました。
遺言書が残されていたが、財産の記載に漏れがあった場合
【相談内容】
お父様が亡くなり、相続手続きについてご長男様からのご相談です。
お父様は「自筆証書遺言」(自筆の遺言)を書いて、自宅で大切に保管されていました。
(お母様は既に亡くなっていて、長男と次男のお二人が相続人です。)
お父様は不動産を複数所有していました。
生前に、ご自身で財産の分け方を考え、お子様二人が争うことの無いように、その想いを丁寧に自筆の遺言に残していました。
ところが、お父様が亡くなり、いざ遺言書の内容を確認してみると、ちょっと困ったことが…。
「●●マンション(マンション名)を長男に相続させる」との記載がありましたが、●●マンションには、居宅部分のほかに「事務所・集会所の持分」がありました。
自室の居宅部分だけでなく、この事務所・集会所の持分についても財産になるため、相続登記(名義変更)をしなければなりません。
ですが、この遺言には、自室のことだけで、事務所・集会所のことは書いてありません。
この場合でも、遺言書を使って、居宅だけでなく、事務所・集会所の持分も、ご長男に相続するという手続きができるのでしょうか?
これについて、法務局に確認をしたところ、「居宅部分については手続きができる。しかし、事務所・集会所の持分は含まれていないので、この部分に関しては、別途、遺産分割協議が必要」とのことでした。
つまり、せっかく故人が用意していた遺言ですが、この内容ですべての不動産の相続手続きができるということにはならなかったのです。
マンションの相続について、注意していただきたい「事務所・集会所」の存在
ここでいう「事務所・集会所」とは、マンションの敷地内に設置されており、住民の共有スペースとして利用する目的の建物です。
集会所や管理人室、ポンプ室、ゴミ置き場などが同じ類にあたりますが、これらの所有権については、①「規約共用部分」となっている場合と、②区分所有者全員がそれぞれの持分割合で共有している場合があります。
①の場合、マンションの規約であらかじめ共用部分として設定されているもので、マンションの専有部分(〇〇〇号室)の名義を変更する際に一緒に自動的に動くので、遺言書にはお部屋のことだけを書けば問題ありません。
しかし、②の場合は、専有部分とは別の建物として登記されておりますので、相続や売買などの際には個別に名義変更の登記が必要になります。
今回のご相談者様のマンションは、②に該当するため、遺言書に個別に記載する必要があったのです。
別途、遺産分割協議を行うことに…
幸い、今回のケースは相続人であるご兄弟お二人の関係性が良好で、連絡も密に取り合っていたため、別途、遺産分割協議を行うことができました。
万が一、相続人同士が疎遠な間柄等でしたら、事務所・集会所の持分だけ手続きができないという最悪のケースも考えられます。
遺言作成は専門家にご相談ください
今回はマンションの事務所・集会所部分の記載が漏れていたというお話でしたが、戸建ての場合は私道部分が漏れていたというケースもあります。
せっかく作成した遺言がそのために無意味なものになってしまい、相続人の間柄によってはその後の話し合いもまとまらなくなってしまっては意味がありません。
自筆証書遺言は、おひとりでいつでも作成することができ、その手軽さが人気です。しかし、内容について専門家のアドバイスを受けることなく作成できてしまうことは、大きなリスクでもあります。
2020年からは法務局で自筆証書遺言を保管する制度も始まりましたが、形式が正しいかは確認してくれるものの、書いてある内容について有効かどうかのチェックはされません。
小さなミスが、思わぬ手間や争いを生むこともありますので、専門家である司法書士にご相談の上、確実な方法で遺言を作成されることをおすすめします。
☆詳しい遺言の作成方法については、こちら
☆「遺言作成サポート」の詳細は、以下の相続専門サイトの特設ページもご覧ください。