「パスポート」は、身分証明書ではなくなりました
こんにちは。
司法書士法人オールシップの市山です。
2020年2月4日以降に発給申請されたパスポートは、身分証明書として使えなくなりました。
実は、2020年2月4日以降に発行されたパスポートには、「住所」が記載されていません。
そして、「住所」が記載されないパスポートは、身分証明書とは認められないことになってしまいました。
金融機関や役所などで「身分証明書を出してください」というときも、このパスポートでは身分証明書とは認められなくなっています。
オールシップでは、不動産の売買の登記のお仕事もしていますが、その売買での本人確認にパスポートが使えなくなりました。
先日私が立ち会った不動産引き渡しの現場(決済)でこんなことがありました。
売主の方が、必要書類である「権利証が見当たらない」ということでしたので、権利証に代わる措置を取ることになりました。
法律上、権利証がない場合は、「本人確認情報」という書類を司法書士が作成して法務局に提出することで、権利証に代わるものと認められています。
そのためには、司法書士が、売主本人の確認をして、物件に関する資料の確認やヒアリング等を行って作成します。
この「本人確認情報」には、身分証明書の確認が求められます。
身分証明書は法律で決められた書類が必要なのですが、運転免許証やマイナンバーカードなどのほか、これまでは「パスポート」もまったく問題なくOKでした。
ですが、2020年2月4日以降に発給申請されたパスポートは、身分証明書としては認められなくなりました。
今回の決済では、決済の前に不動産会社の方とやり取りをしているときに気付いたのですが、送られてきたパスポートのコピーを見ていたら、発行が「2020年11月」に発行されたものでした。
これではパスポートが身分証明書として使えない!
ということで、大急ぎで他の書類がないかと確認してもらったところ、マイナンバーカードがあると言うことだったので、そちらで事なきを得ました。
少し前まで大丈夫だったものがいろいろな世の中の変化にあわせて変わっていくことも多いです。法律の改正や実務の変更には、常に気を配らないといけないなと、改めて思った一件でした。
ちなみに、本人確認情報で行う決済では、結構シビアに本人確認と物件確認をします。売主のなりすましの事件などもありますが、これを未然に防ぐのも司法書士の仕事です。
状況によっては、物件まで足を運んでインターフォンを押して確認や、周辺の住民の方に確認などもしながら書類を作成することになります。
こうして作成した書類はとても重要なものですし、確認を怠って作成すれば司法書士としての責任問題にもなります。それだけに、決して手を抜くことはできません。
毎回、緊張感の連続ですが、同時に司法書士としての社会的使命を感じる瞬間でもあります。
追記:
不動産登記の本人確認情報では、顔写真付きのものであれば1点、顔写真付きのものでなければ2点以上となっています。
不動産登記規則72条で、「旅券(パスポート)」は1点(いわゆる1号書類)とされています。
この条文のなかでは、「ただし、当該申請人の氏名及び生年月日の記載があるものに限る。」と定められていて、条文上はパスポートに住所の記載(いわゆる、所持人記入欄)があることは求められていません。
そのため、2020年2月4日以降に発給申請されたパスポートをもとに本人確認情報を作成しても、法務局によっては受け付けられるのではないかとも思います。
ただ、仮に、他の身分証明書が一切なく現住所の確認ができない状態で、住所の記載がないパスポートのみをもって本人確認とするのは、司法書士の職責上は問題ありではないかと思います。